我々がプレイしているLOL~League of Legends~は戦略ゲーム・戦術ゲームどちらに分類されるのか考察してみました。戦略ゲームと戦術ゲームどちらが優れているとかではなく、単純にLOLというゲームがどちらの『種類』に分類されるかという話です。
目次
戦略と戦術の違い
LOLが戦略ゲームなのか戦術ゲームなのかを論じるに当たってまずは『戦略』と『戦術』の定義を確認しておかなければなりません。響きがよく似たこれらの言葉は混同されがちですがその意味には明確な違いがあります。
とはいえ百科事典の内容をそのまま長文で書くわけにもいかないため簡略化したものを下記に記します。
- 戦略:目標または目的を効果的に達成するため力や資源を総合的に運用する大規模かつ長期的な方法。戦争の総合的な準備,計画,運用の方法。
- 戦術:戦略により定められた構想に従い実際の作戦や戦闘において部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する技術。戦略と比べ小規模かつ短期的なものを指す。
平たく言えば有利な条件を整え、あわよくば戦わずして勝利するのが戦略。個々の戦場において部隊をどう運用して戦うかが戦術です。
例えばチェスは必ず自分と対戦相手の戦力・配置が五分の状態からスタートするため100%戦術のみのゲームです。(将棋でもいいですが持ち駒という要素があり侵攻ルートすら無視できるため、こちらは厳密には陣取りゲームに分類されます。)
LOLは戦略ゲームなのか戦術ゲームなのか
では互いに同量のチャンピオン、同量のミニオン、同量のタワーという五分の戦力を有し、自陣と敵陣にほぼ対称的な地形が与えられた状態で戦うLOLはどちらに分類されるでしょうか。もうおわかりですね、戦術ゲームです。
LOLでは資源の要素が経験値とゴールドしかなく、いずれも敵との戦いの中で獲得する(チャンピオンキルやレーン戦でのCSの獲得・阻害)か、第三勢力から略奪する(中立クリープ)しかありません。
つまり資源を獲得するためには敵と戦わなければならないのです。(当然敵と対峙することになるにらみ合いも戦いに含みます。)
またLOLでは建物を自由に建造することができません。バロンがいくら重要な資源だからといって防壁を張り巡らせて守ったりミッドレーンを要塞化することはできず、あくまでもチャンピオンの移動と配置、自動で進軍するミニオンによってのみ要所を守らなければなりません。
さらにミニオンは自国の兵士という扱いでありながら作成にも維持にもコストを一切必要とせず、試合時間中無限に湧き続けます。両国ともどれだけミニオンを失っても経済的に疲弊することはありません。
LOLに戦略要素を入れたらどうなるか
戦略レベルの意思決定が可能なら序盤のミニオン生産を一切止めてしまえば良いでしょう。序盤のミニオンはタワーに対するダメージも期待できないばかりか、敵チャンピオンに経験値とゴールドを供給するため敵を利するだけです。
相手がミニオンを出撃させるならこちらはタワー下で敵ミニオンを処理しているだけでレベル差もゴールド差もつくため戦力差は広がる一方です。
アイテムショップを無力化するのも有効な戦略です。これさえなければいくらゴールドを貯めようともチャンピオンの装備は強化されないため圧倒的に有利な状況を作ることができます。
具体的な方法としては
- アイテムショップがサモリフに到着するまえに襲撃し暗殺する
- アイテムショップがサモリフに到着できないよう移動経路を破壊ないし封鎖する
- アイテムショップを買収する
などが挙げられます。仮に失敗したとしてもショップが恐怖を抱きサモリフに商売に来なくなればいいわけですし、相手国がショップに護衛を付けるならその分経済的な負担を強いることができます。
もっと言えばアイテムショップの到着を30分遅らせるだけでいいのです。それだけで『敵ネクサスを破壊する』という戦略上の目的は達せられるでしょう。
なにも強靭な敵チャンピオンと戦って勝つ必要はなく、敵チャンピオンにレベルや装備を整える機会を与える必要もないのです。第一その方が楽です。
このように戦略を論じる上で経済や補給線といった概念は絶対に切り離せないものですが、LOLはそういった要素を採用していません。戦略シミュレーションゲームではないため当然です。
プロシーンにおける戦略
LOL自体は戦術ゲームですがプロシーンや大会における戦略は存在します。矛盾するように思われるかもしれませんが具体例を出すとわかりやすいでしょう。
戦略上の目的をWorld Championship(世界大会)の優勝と仮定します。
プロシーンにおける戦略とはつまり
- 世界一優秀な選手を集める
- 世界一優秀な後方支援人材(コーチなど)を集める
- そのメンバーが効率的に練習できる環境を用意する
- そのメンバーにおける最強の戦術とそれに沿ったバン・ピックを見出し大会までに十分扱えるようスケジュールを策定する
- 一軍メンバーが何らかの理由で欠場せざるを得ない場合に備えて補欠メンバーを用意する
- より多くの戦術に対応できるよう有効に扱える戦術を増やす
- 大会で選手が十分なパフォーマンスを発揮できるようスケジュール調整を行う
- 上記の状態を維持し続けられるだけの十分なキャッシュフローを確保する
といったことです。
そしてLOL自体もRiot Games社の経営戦略上のコンテンツであり、LOLが『eスポーツ』を謳うのも宣伝戦略の一環です。
ゲームの主旨からは外れてしまいますが戦略とはこういった下準備や計画、その後の運用を見通して策定する長期的なものです。
ソロQは何ゲームなのか
では我々が普段プレイしているソロQは何ゲームなのでしょうか。
ここまでお読みいただいた方にはお分かりかもしれませんが、戦術とは『複数の』兵士からなる部隊や物資をそれぞれどう運用して戦闘を行うかといった技術です。
1体のチャンピオンしかコントロールできないソロQは、実は戦術ゲームとしての体すら成していません。
Pingやチャットによって味方に指示を出すことは可能ですが、味方がその指示に従ってくれるとは限りません。あなたはその部隊を指揮し戦術を決定する指揮官ではないからです。
そもそも命令系統すら統一されていない烏合の衆を戦術論的に『部隊』とはみなしません。
1体のキャラクターを操作し移動・攻撃・回避を行うソロQは分類としてはアクションゲームのそれに落ち着きます。
こうして客観的に分析してみるとLOLのプロやチャレンジャー帯にFPSゲームやTPSゲーム(一人称・三人称視点シューティングゲーム)出身者が多く見受けられるのも頷けます。
LOLプレイヤーに求められるのは総司令官としての戦略眼や指揮官としての状況判断・戦術決定能力ではなく、あくまで1人の兵士としての状況判断・意思決定・戦闘能力なのですから。
- 自分が王・最高司令官 → 戦略ゲーム
- 自分が前線指揮官 → 戦術ゲーム
- 自分が一介の兵士 → アクションゲームやシューティングゲーム
こう見るとわかりやすいですね。