「俺がキャリーする!」「アタックダメージキャリー」「レイトゲームキャリー」
LOLやFPS界隈でやたらと耳にするキャリーという言葉ですが、LOL界隈の日本語文献やYouTubeにおいてやたらと用法を間違えられている(結果として内容がちぐはぐになっている)ようです。
※ダイヤモンド以上のプレイヤーは正しく使えているのですが、聞く方が間違った認識でいると捻じれて伝わってしまう。
今一度、LOLで使われているキャリーという言葉について確認しておきましょう。
目次
そもそもキャリー(Carry)とは
そもそもキャリーという言葉は英語のCarryから来ています。
これは
- (物や人を)運ぶ、運搬する
- (責任・任務など)を引き受ける、果たす
- (情報や音や病気を)伝える
- (人を)行かせる
といった意味を持つ動詞です。
そしてそこから転じてゲーム、特に競技性を売りにしているeスポーツ界隈では「自らの活躍によって、味方チームを勝利に導く(運ぶ)こと(やそのプレイヤー)」を「キャリー」と呼ぶようになりました。
ここまではいいのですが、LOLにおいてはこのキャリーという言葉が異なる意味でも頻繁に使われています。
これが事態をややこしくしています。(単純に英語力というか読解力の問題なのですが)
ADCはキャリーなの?
これです。ADCが(Attack Damage Carry)の略だというのは聞いたことがある方も多いでしょう。
先ほどの説明だと「味方チームを勝利に導くのがキャリー」、つまりこの解釈を無理やり当てはめた場合「上手いADCプレイヤーは試合を勝利に導いてくれる」ことになります。
しかし実際はどうでしょう。
上手なADCほど視界のない場所に安易に近づいたりしませんし、ドラゴン前に敵ジャングラーをキャッチしたり、集団戦で勝てる瞬間を見極め自ら突撃していくことも、中盤以降サイドレーンを1人で押して1人倒し2人倒しコイツ止まらない…、といったことも当然しません。
コツコツファームしてみんなが戦いを始めた時になるべくたくさんAAをするだけ。
先ほどの言葉のイメージと全く合いません。むしろチームに引っ張ってもらっているのがADCです。
じゃあADCのキャリーって何?
Attack Damage Carry = 物理ダメージ係
これだけです。
要は「物理ダメージを運ぶ人」という役割なだけで、先ほどの試合を勝利に~みたいな意味合いは一切ありません。
- 試合をキャリーする
- 物理ダメージをキャリーする
普通に文章が読めれば英語に精通していなくてもわかりそうなものですが、LOLが入ってきて以降、様々なレベル帯のプレイヤーが「キャリー」「キャリー」と連呼するので、カジュアルプレイヤーには上級者がこれらの意味合いを使い分けていることがわかりません。
レイトキャリーもダメージキャリーも、すべて試合を勝利に導く方だと思ってしまうわけです。
そもそもアクション系ゲームのプレイヤーは言語化が苦手
そもそも論ですがFPSやLOLなどアクション系ゲームのプレイヤーは言語化が苦手です。(もっと正確にいえばリアルタイムに近づくほど言語化が苦手になる)
これは単純な話で
「それやばいよ!」
と言い終わるかどうかの時点でそのプレイヤーは既に倒されているためです。
彼には一瞬先の光景が見えていたわけですが、いちいちそれを言語化することはありません。アクションゲーム、というよりゲームがリアルタイムに近いほどこの傾向は強くなります。
そのためLOLはプレイヤー人口の割にテキストコンテンツが少なく、動画でもうまく解説できている人はあまりいません。LOLのYouTuberが考えを思うように伝えきれていない感はあなたも聞き覚えがあるでしょう。
さらに実際にプレイしながら言語で解説できるプレイヤーはほとんどいません。(Evi選手が頑張ってプレイしながら解説していますがやはり相当つらそうです)
普段から言語化に慣れていないのと、特にLOLのプレイ中の脳は言語野以外の部分を酷使しているためです。
逆にカードゲーム(リアルタイム性がほぼゼロ)や戦略シミュレーションゲーム(プレイ時間より日頃言語で考えている時間の方が長い)界隈のプレイヤーは言語化が得意です。
ダメージキャリーとゲーム(試合)キャリー
長くなりましたがそこらじゅうで「キャリー」「キャリー」と雑に使われているこの言葉はLOLでは2つの意味で使われています。
最後にそれぞれの意味を具体例付きで復習しておきましょう。
ダメージキャリー
ダメージキャリーは「ダメージ係」というだけの意味です。チームで誰かはダメージ係を担当する必要があるためこう呼ばれています。
キャリーという言葉はこの用途では次のように使われています。
- ADC(Attack Damage Carry):物理ダメージ係
- APC(Ability Power Carry):魔法ダメージ係
- レイトキャリー(Late Carry):後半ダメージ係。必然的にレイトキャリーのキャリーはこっちの意味になる。
要はダメージを出す専門の係(ほぼそれしかできない)というだけなので、試合をキャリーしやすいかどうかは一切関係がありません。
というかだいたいダメージキャリーはCC皆無なのでガンクやローム、キャッチの性能が低く、試合キャリー性能はむしろ低いです。
※ずっと低レートから上がれない人はここを誤解しているのではないか、という確信がこの記事を書こうと思った最大の理由です。
- フィオラ
- マスター・イー
- カサディン
- ジンクス
- ブランド
こんな構成を考えてみて下さい。
レーン戦フェイズでボコボコにできていれば良いですが、五分以下だったり、どこかのタイミングで誰かがキャッチされて一度でも主導権を握られてしまった場合、このチームは機能不全に陥り何も出来なくなります。
ドラゴンが湧く
↓
視界を取り返そうとしてブランドかマスター・イーあたりがキャッチされて即死する、あるいは何もしない(AFK)
↓
真っ暗
↓
誰も先頭を張れないので「お前行けよお前行けよ」とダチョウ倶楽部が始まる
↓
相手からは丸見えなので、無理に行った場合理想的なキャッチから入られて崩壊
経験がある方も多いのではないでしょうか。
※実はこの場合の正解は視界制圧されているドラゴンとは反対サイド(トップレーン)へ行って、ドラゴンと引き換えにタワーとゴールドを獲得する、なのですが、プラチナあたりでも無理矢理見に行ってキャッチされるプレイヤーが後を絶たないためソロQでは現実的ではありません。
視界がなければダメージキャリーは何もできませんし、強引に突撃する固さやAoECCもありません。ダメージキャリーは試合に関してはあくまでキャリーしてもらう(味方に引っ張ってもらう)側なのです。
ゲームキャリー
ゲームキャリーは皆さんが考えている「キャリー」そのままの意味で「試合を勝利に導くこと(やそのプレイヤー)」のことです。
LOLのソロQは勝敗が着くまでが非常に短いため、序盤から活躍できることがほぼ必須条件となります。
例えば
- ジャングラーでレベル3で対抗をソロキルし、そのままもう1レーンガンクして勝たせる
- ミッドレーナーでジャングラーとともに最初の2v2(お互いガンクあるいはカニファイト)を制す
- サポートでレベル2先行し、ADCとともにダブルキルを取る
こうやって試合を有利な方に傾け、中盤以降は
- オブジェクトが湧く少し前に敵をアサシンして人数差を作る
- オブジェクトを使ってベイトし、キャッチあるいは理想的なエンゲージを決めて集団戦に勝つ
- オブジェクトが湧く少し前にベイト用のワードを散りばめておき、孤立した相手をキャッチして人数差を作る
など自分からどんどんチームを勝利に導いていきます。
トップやADCといった隅っこのレーンでもキャリーできないことはありませんが、一部のチャンピオンを除きこれらのロールは力を発揮するのがどうしても中盤以降になります。
味方が前述のボコられている側だった場合、あなたがそれまでたっぷりとファームできていたところで何ができるでしょう。
マルファイトで5人ノックアップでも決めれば試合を逆転キャリーできる可能性はあるかもしれませんが、チームがボコられて視界も不十分な状況で理想的なエンゲージを決めるのは現実的ではありません。
私は日本鯖以外にNAと台湾鯖でLOLをプレイしたことがありますが、アサシンやファイターといった少数戦に特化したチャンピオンがオブジェクトが湧くまで何もせずうろうろしているのは日本鯖だけが顕著に多いです。
そしてその原因の1つが、この「キャリー」という言葉の誤用と誤解にあるのではないか、と思っています。
LOLというゲームをわかっていない低レートほどチームにダメージキャリーが過剰で、ゲームキャリーが不足しています。
試合に勝ちたいなら誰かがいい感じにしてくれることを期待して待機するのではなく、自分が率先して試合を動かしましょう。それこそが勝つために必要だとあちこちで言われているゲームキャリーという意味でのキャリーです。