『低レート(魔境)でキャリーしやすいチャンピオン』というとトリンダメアやマスターイー、カタリナなどが良く挙げられますが、本当にそうなのでしょうか。この記事では日本サーバーの低レート帯(ブロンズ~ゴールド)の実際のデータから勝率の高いチャンピオンたちの傾向を分析してみました。
目次
どこまでが低レートなのか
この記事はアイアン~ゴールドまでを低レートとして執筆しています。理由はいくつかありますが、最も大きな理由は統計的に勝率の高いチャンピオンの傾向が変わってくるのがプラチナあたりからのためです。(ハッキリと変化が見受けられるのはダイヤモンドからです)
アイアン~ゴールドまで、これらのレート帯に大きな差はありません。運がいい人がゴールドで、運が悪い人がアイアンくらいに思っておいてもいいと思います。
厳密に言えばレートが上がるにつれグループアップや既に起きた戦闘に駆け付けること(これは寄りとは呼ばない)が微妙に増えていくような気はしますが、正直誤差の範疇です。
よくある低レートキャリーの誤解
『低レートでキャリーしやすいチャンピオン』というと真っ先に挙がってくるのが次の3つです。これらはスマーフが使えばキャリーしやすいチャンピオンであって、現在低レートにいる人がキャリーしてレートをあげていくのに適したチャンピオンではありません。
これらのチャンピオンは育ってしまえば文字通り1v5が可能だったり、敵をタワー下にすらいられない状況に追い込むポテンシャルを持っていますが、育つまでの過程が難しかったり、育つまでの間ひどく味方に依存したり、育っても試合を勝ち切るには一定以上のゲーム理解度が必要だったりします。
1.スプリットプッシャー
『低レートではTOPでスプリットプッシャーを出してひたすらプッシュすればいい』という話を耳にしますが、スプリットプッシュ自体が極めて味方依存度の高い戦術です。
詳しくは下記の記事で紹介していますが
スプリットプッシュが戦術として成立するには次の前提条件が必要です
- スプリットプッシャー本人が1v1最強であり、敵が1人だけならば誰が止めに来ようともタワーに圧力をかけられること
- スプリットプッシャーが敵2人や3人に狙われても即死せず、十分な時間敵を引き付けられること
- 他の4人がグループアップし、スプリットプッシャーと他レーンのプッシュタイミングやリコールタイミングを合わせられること
- 他の4人が敵5人に狙われてもエンゲージをかわしつつ、しかも敵をある程度視界に留め続けられること
- スプリットプッシャー側に敵が2人3人釣れた時、他の4人が即座に対応しオブジェクトに圧をかけられること
上2つはスプリットプッシャー本人が上手ければどうにかなるかもしれませんが、下3つは味方全員がスプリットプッシュという戦術を理解し、かつ実現する技術が求められます。
こんな高度な連携を完璧に取れる味方が4人全員集まったなら、スプリットプッシュなんてしなくてもその試合はどうとでも勝てると思いませんか?
実際この戦術は味方が良くわからないタイミングでリコールしたり、スプリットプッシャー側に敵が3人も釣れているのに味方が何もしなかったり、プッシュするタイミングが合わずにスプリットプッシャーが無駄死にすることで容易く崩壊します。
スマーフたちのいうスプリットプッシャーがキャリーしやすい、というのは意味合いが全く違います。3人釣れたら3人倒してそのまま直進しタワーを殴るのです。
ほとんど毎試合それをきちんとこなせるのであれば手っ取り早い方法ですが、今のあなたにそんなことができるならそもそもこの記事には辿り着かないはずです。
2.ファーム系ジャングラー
『低レートではファーム系ジャングラーでひたすらファームして後半ペンタキルすればいい』という話を耳にしますが、色んなものを端折りすぎています。
そもそもファーム系ジャングラー自体ある程度ゲームへの理解を深めた中級者以上向けです。何も考えずマップも見ずにひたすらファームしていたのでは育ち切る前に試合が崩壊します。
もっといえばこれらのチャンピオンはマップに表示されている情報を『見る』だけでなく、見えたものからマップに映っていない情報を『読む』ことができて初めて真価を発揮します。
これらのチャンピオンはレーン戦段階でのガンク圧が弱いため、ピックした時点で味方が不利なレーン戦を強いられることになります。
それを逆手にとってガンクをしようにもCCや序盤のダメージが貧弱なため味方がよほど素晴らしいガンク合わせやベイトをしてくれなければ刺さりません。
味方が敵のガンクを恐れてセーフにプレイし続ければジリジリ差が付いて気付けば全レーン負け、普段通りにプレイしていればどこかのレーンは敵のガンクでやられてしまうでしょう。
その間あなたが何もしていなければ、自陣ジャングルでファームをしているだけだったら、あなたが育つ以上のペースで敵は育ち、味方は腐っていきます。
これらのチャンピオンで安定してキャリーするためには単純なガンク以外のジャングラーの仕事を理解し、それを状況を応じて的確に実行し続ける必要があります。
スマーフたちのいうファームしているだけで勝てる、という言葉の中には、彼らが息をするように行っているジャングラーの仕事全てが含まれています。
3.アサシン系チャンピオン
アサシン系チャンピオンもこの手の話題ではよく名前が挙がりますが、これらのチャンピオンはキルは取りやすくても試合を勝ちに導くために高いゲーム理解度を必要とします。
もうバロンが湧いているのに敵が悠々5人グループアップしてバロン前に位置取り、集団戦の機会を与えてしまっているようではこれらのチャンピオンを使っている意味がありません。
アサシンが本当に恐ろしいのは、ADCがセカンドタワーに押し寄せているミニオンを処理しようとしたら殺される、サポートが視界を取ろうとちょっと自陣の森に入った瞬間殺される…
そうして柔らかいチャンピオンではタワー下にすら1人ではいられなくなり、相手はグループしなければレーンを押し上げることも自陣森の視界を取り返すこともできない。
そういった状況を作り出せることがアサシンの恐ろしさであり強みです。
集団戦もやれなくはありませんが、敵が密集しているなかDPSがろくにダメージを出す前に瞬殺するのは、孤立してファームしているADCや視界を取るためにうろついているサポートをキャッチしてキルするよりも遥かに難しいです。
そして集団戦で敵のADCを倒したとしても、たしかにオブジェクト獲得を阻止または遅らせることができますが、それだけでは『試合に負けないこと』『試合時間を引き延ばすこと』はできても『試合に勝つこと』はできません。
アサシン系チャンピオンで試合に勝つためには敵がレーンを押して、グループアップして、オブジェクトに圧をかけてくる『前に』、敵を暗殺して人数差を作り、逆にこちらがオブジェクトに圧をかけなくてはならないのです。
スマーフがアサシンを使えば試合中ほとんど常に敵チームの誰かしらはデスタイマーになっています。そしてそれができるのは高い操作技術だけでなく、敵が孤立する位置と場所を特定し続けられるほど常に状況を読めているからです。
本当に低レートキャリーしやすいチャンピオン
上記のチャンピオンたちはスマーフが低レートをキャリーする分には非常に適しています。
2tier上、つまりシルバー帯であればプラチナの、ゴールド帯であればダイヤモンドのプレイヤーが試合をキャリーしようとしたときに効率良く勝てるチャンピオンであることは間違いありません。
しかしこの記事を読んでいるあなたが知りたいのは、現在低レートにいる人がキャリーしてレートをあげていくのに適したチャンピオンのはずです。
極端な実力差がないなら、実際に低レートで高い勝率を叩き出しているチャンピオンを使うのが利口というものです。
1.プッシュ力が強く、キャッチ性能が高いミッドチャンピオン
これらはレーンをプッシュしようと思えばごく短時間でプッシュすることができ、かつ対面がそれを食い止めることが難しいチャンピオンたちです。
レーンをプッシュすることで対面をタワー下に貼り付けにしながら自分だけがフリーの時間を作ることができます。プッシュが早いからといって闇雲にプッシュし続けるとガンクの餌食なので、フリーの時間を作りたい時にプッシュするよう心がけましょう。
例えばシーズン11現在、試合開始3:15には必ずカニが湧いて、敵味方のジャングルがカニの取り合いでファイトをする可能性があります。その少し前にレーンを押し切って予め味方ジャングラーの近くに寄って隠れておけば、相手ジャングラーがファイトを仕掛けて来たとしても一時的に2v1の状況が作れます。(マルザは3レベは押される側ですが)
5:00には必ずドラゴンが湧きます。その時BOTレーンが押し込みそうなら、味方ジャングラーもBOTサイドにいるなら、ドラゴンに寄っておけばチェックに来た敵ジャングラーやサポートをキャッチして倒せるかもしれません。
そうやってジャングラーが川に出るタイミングと連携してレーンをプッシュし、敵ジャングラーやサポートをキャッチして倒していけば敵は怖くて川に出られなくなります。
約7:00には最初に狩ったバフがリスポーンします。味方ジャングラーを誘って敵側のバフを襲いに行きましょう。ここまですれば敵ジャングラーは息ができなくなります。
もちろん毎回戦果が上がるわけではありませんが、こちらはミニオンを押し切ってから動いているためほとんどロスはありません。タダでキャッチのチャンスを作り出しただけでも十分です。
川でジャングラーと合流し、何もなければレーンに戻ってもいいですし、サイドにガンクにいけそうならピンを出して一緒に行きましょう。仮に敵ジャングラーが近くにいても人数有利ですし、相手のミッドが寄ってくるにしても遅れてきます。
本来こういうタイミングでは相手はミッドのロームを警戒して迂闊な行動は取らないものですが、何度も何度もミッドが姿を消していれば相手もしびれを切らします。
ミッドレーナーのロームが刺さって仲間割れを起こしてGGはよく見る光景ですよね。
2.強力なガンク性能を持ち、タイマンが強いジャングラー
これらのジャングラーに共通する点は以下の通りです。
- 対象指定または確実性の高いCC
- 1v1の殴り合いに強い
- 相手や状況、育ち具合によってはレーナーにも1v1で勝てる
序盤から強力なガンクを仕掛けられるジャングラーは早々に敵のレーニングを妨害し、キルを量産することで味方レーナーと共に自身も育つことができます。
低レートでは味方のガンク合わせも恐ろしく下手ですが、これらのチャンピオンは確実性の高いCCとそれなりの硬さを兼ね備えているため、味方の合わせがひどく遅くてもガンクを成功させやすいです。
赤バフを持ったレベル3のタイミングであれば最悪味方が全く合わせてくれなくても、敵レーナーを1v1で殴り倒してしまうことすらあります。(ラムスはソロキルまでは難しいですが)
また、タイマン性能が高い(敵JGとの1対1に勝てる、あるいは遭遇しても退けることができる)ため一度レーンの有利を築けばそのサイドの森を制圧し、敵レーナーだけでなく敵ジャングラーまで腐らせることができます。
本来こういったジャングラーと相対した場合敵が取るべき行動としては
- ジャングルを縦に割り反対サイドで有利を築く
- ミッドレーナーと共に侵入してきたジャングラーを仕留める
となりますが、①の知識は低レートのジャングラーの大半にはありません。
②を試みようとする人は多いでしょうが、これはそもそもミッドが勝っていなければ難しいうえ、タイミングや経路などミッドとジャングラーの連携を要します。
ソロQで味方との連携がいかに難しいかはあなたもよく知っているでしょう。失敗すればお互いのせいにしあって容易く仲間割れが始まることも。
3.集団戦が強く、わかりやすいAOECCがあるチャンピオン
低レートの試合は5v5の集団戦にもつれ込むことが比較的多いです。これにはいくつか理由がありますが、多くの人が試合を傾ける方法は知っていても完全に突き崩す方法を知らないことが大きな要因でしょう。
このゲームは集団戦の規模が大きくなるほど根本的に難しいです。単純に見るものが多いうえ、敵のスキルのクールダウンやサモナースペルの有無など直接見えないものまで把握していないと良い動きはできません。
ですが低レートの集団戦はそんな次元ではありません。敵がCCにかかっていることに気付いていない、気付いたころにはCC時間が終わってた、タンクがフォーカスを受け持っているのに誰も敵を殴らない、こんなレベルです。
だからこそでしょう、分かりやすい集団戦用スキルを持つチャンピオンたちはよく低レート帯での勝率上位にランクインしています。
アニーが敵に突っ込んで熊を召喚したら誰でも戦いますし、セラフィーンのウルトが決まれば猿でもチャンスだと分かります。ニーコに至っては今から突っ込むぞーと予告までしてくれます。
死ぬほど連携が取りづらいソロQですが、これらのわかりやすいAOECC(行動妨害付きの範囲スキル)が炸裂した瞬間だけは全員の意思がオールインに統一されます。
これらのチャンプを使う場合、ウルトを使う際の敵味方の位置だけはよく確認しておきましょう。あなたがフラッシュインでギリギリ届く距離は味方が合わせられる距離ではないかもしれません。
欲を言えば味方チャンピオンのブリンクの有無、フラッシュの有無も確認しておければ上出来です。
低レートでキャリーしやすいチャンピオンの調べ方
あなたは『今強いチャンピオン』を調べる時、どうやって調べていますか?
OPGGの『チャンピオン分析』を見ている方、完全に不正解です。あれは韓国サーバープラチナ帯以上の勝率やピック率のデータです。
実は日本サーバー低レートの統計では勝率の高いチャンピオンたちは全く異なります。環境が違うのですから当然です。
日本サーバーの低レートで強いチャンピオンを知りたいのであれば、日本サーバーの低レートでのチャンピオンの勝率やピック率を見るべきです。
方法は簡単で、OPGGの『統計』から『見たいレート帯』を選択するだけです。
この記事で紹介した『低レートでキャリーしやすいチャンピオン』もこの方法で日本サーバーの各レート帯のチャンピオン勝率ランキングを見て、ブロンズ帯~ゴールド帯で特に勝率が高く、ある程度以上ピック率があるチャンピオンからピックアップしています。
この記事は2021年2月16日、シーズン11初めごろに執筆したものですので、今後のアップデートやメタの変化、LJLの人気チームや人気プレイヤーが変わって環境が変化すれば『低レートでキャリーしやすいチャンピオン』も個別には変わるかもしれません。
ですがLeague of Legendsというゲーム自体の根本が変わらない限り、低レートでキャリーしやすいチャンピオンの傾向そのものは大きく変わることはないでしょう。
あなたが低レートを脱却する一助となれば幸いです。